2016年度トルコ調査報告会プログラム

2017年3月4日(土)

13:00  挨拶
阿部 知之 (中近東文化センター理事長)
13:10  アナトリア考古学研究所の活動(2016年)
大村 幸弘 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
13:45  第8次ビュクリュカレ発掘調査
松村 公仁 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
14:30  休憩
14:45  第31次カマン・カレホユック発掘調査
大村 幸弘 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
15:30  第8次ヤッスホユック発掘調査
大村 正子 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
司会:吉田 大輔 (中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所)
16:30  懇親会

2016年アナトリア考古学研究所の活動

研究所の活動は、大きく分けて三つあります。一つは発掘調査、遺跡踏査などの研究活動、二つ目は若手研究者の養成、そして三つ目は研究成果の社会還元です。研究に携わっている者は当然ながら、その研究を推し進め、成果を上げることが大切です。しかし、研究所としては研究を進めるだけではなく、出土した遺構、大量の遺物、それらから得られた成果や知識は我々だけのものではなく、次世代に継承されるべきものであるという考えを基に、例えば、学生や若手研究者や技術者のためのフィールドコースや講演会を開催し、カレホユック考古学博物館と連携した活動を展開するなど、第二、三の活動にも重きを置いています。また、アメリカ研究センターをはじめ各国の考古学研究所や発掘調査隊との交流も年々活発化し、今年度もカマンに多くの来訪者を迎えました。

第8次ビュクリュカレ発掘調査

ビュクリュカレは、クズルウルマック川の西岸に位置する紀元前2千年紀の都市遺跡です。今年度の調査はヒッタイト時代の層に主眼を置き、昨年度確認された複数の建築遺構のそれぞれがヒッタイト時代のどの時期に属するかを把握するため調査を行いました。正確な年代決定が出来るまでには至らなかったものの、ヒッタイト時代に2度の火災を含め、5建築層の存在が確認されました。出土した3点目の粘土板文書の内容とともに、この地の覇権争いの激しさを物語るものと言えます。また今年度は千葉工業大学との共同プロジェクトとして遺跡南端の岩陰部の調査を行いました。ここからは大量の鉄滓が確認されており、その年代を明らかにすることを目的として工房址の調査を行ないました。

第31次カマン・カレホユック発掘調査

カマン・カレホユックは、トルコ共和国の南東約100キロ、アンカラからカイセリを結ぶ国道旧街道の南側に位置しています。直径280メートル、高さ16メートルの中規模の遺丘です。1985年に予備調査を行ない、1986年以来現在まで、考古学研究の基本である『文化編年の構築』すなわち『年表』の作成を主目的として発掘調査を継続しています。2016年度は主に北区の前期青銅器時代の第Ⅳ層と南区の後期青銅器時代の第Ⅲ層において、詳細な調査を行いました。

第8次ヤッスホユック発掘調査

ヤッスホユック は、カマン・カレホユックから約25km東に位置し、南北500m、東西625m、高さ13mの比較的大きな遺丘です。遺丘中央部では鉄器時代、中期青銅器時代、前期青銅器時代の3文化層が確認されています。特に第Ⅲ層:前期青銅器時代後半の王宮址は、前3〜2千年紀における都市形成過程を跡付ける上で重要な発見です。今シーズンはこの王宮址の東方向への広がりを確認することができました。この王宮址のさらに下に存在するとみられる第2の大火災層を明らかにすることを念頭に調査を開始した西側のグリッドでは、昨シーズンに続き、鉄器時代層を中心とする発掘を行いました。遺丘頂上部の第2の高まりにおける地中探査では、比較的大きな建築遺構群の存在が判明しました。

中央アナトリアにおける遺跡踏査(2016年)

カマン・カレホユックで本格的な発掘調査を開始した1986年以来現在まで、毎年発掘調査終了後の2〜4週間、中央アナトリアの遺跡踏査も継続してきました。この調査の主目的は、カマン・カレホユックの発掘調査で層位的に検出された文化が、中央アナトリアでどのように展開していたかを確認することです。これまで1500を超す遺跡を踏査しましたが、カマン・カレホユックで確認された文化も時代によってかなり異なった文化圏を構成しており、古代アナトリアにおける複雑な文化構成を物語っているようです。  2016年度は、ヨズガット県のメルケズ(中央)郡、セファアトリ郡で20遺跡の踏査を行いました。